なんとなくうまくいかない現在と
無敵だと思ってた学生時代と。
味気ない会話と何気ない会話で時間をつなぎ、佐々木と主人公たちの関係を振り返っていきます
実写の映像なのに、まるで福島聡であり豊田徹也であり黒田硫黄の紙面だった
ラストの展開は福島聡。現実と虚構が説明もなくないまぜになる、熱情のもたらす力技。
台詞回しと空気感は豊田徹也。何気ない言葉と工場、居酒屋、夜明けの部屋の温かくもあり寂しくもある感じ。
そしてラストの作画は黒田硫黄の筆致。力強さと荒唐無稽さ、構図もばっちり想像できた。
たぶんラストシーンについて疑問を持ったり受け入れられない人は上記作家の作品を読んだことがなかったり好きじゃない人なんだろうなと思います
ラスト1分の展開、私は大好きです
しかしながら…
漫画を読まなくなって随分たったもので。
社会人になって新刊が出るスピード感についていけなくなったのもあるし、フィクションに対する感度も鈍くなった
だけどこの映画を見て、中学の頃ブックオフで夏の通り雨の音を聞きながらビームやアフタヌーンが描く不条理や言いようのない気持ち悪さ、勧善懲悪ではない世界の洗礼を受けた頃のことを思い出した
それが私を私たらしめるものだと思い出した
一方で、そろそろ学生を終わろうというモラトリアム期に感じた焦燥感やカラオケをあとにした夜明けの青さ、手持ち無沙汰でやるゲームの感覚も蘇ってきた
おそらく高評価を受けているのは観客に「あの頃」を思い出させるからだと思う