すきなもの雑記

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沙門空海 唐の国にて鬼と宴す

コロナ禍において歌舞伎にはまり、そこから何故か好奇心の延長で夢枕獏作品を読んでいく過程はこちら

歌舞伎→平安バディモノ→陰陽師→(日本版映画とか中国版配信とかいろいろあって)→夢枕獏作品→沙門空海→(映画版とか歌舞伎版とかいろいろあって)→現在

約1年で連想ゲームがここまで来ました

前回記事では沙門空海もメディアミックス展開がいろいろあるよ!ってところで終わったので、その後の話です

 

◆「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」ベースとなるあらすじ◆

命からがら唐の国にやってきた空海橘逸勢

空海には真言密教を習得し日本に持ち帰るという野望がある

時の長安は国際都市。様々な人種が入り乱れており、娼館「胡玉楼」もその1つ。

そこで出会った白楽天玄宗皇帝と楊貴妃について思索を巡らす詩人。

化猫に取り憑かれた役人、綿畑での異変、皇帝への不吉な予言…

空海と逸勢は長安で様々な人と出会いながら、かつての遣唐使阿倍仲麻呂の書状を手に入れる

玄宗皇帝と楊貴妃の愛憎の顛末が、現在の長安の怪異の元凶だと突き止めるが…

 

 

 

空海がとにかく魅力的

泰然自若として聡明で、ユーモアもあって、体格もよく、お経を詠んだらイケボで(これは想像)…

逸勢に「お前は女を知っているのか?」茶化されても「あれは良いものだ」と返せる余裕よ

だからこそ作中の突飛かなと思える展開も納得してついていけるし描かれない部分での想像の幅が広がる

長安の描写も克明で、様々なルーツを持った人のやり取りや街の熱気が盛りだくさんに描かれている

逆にメディアミックス化する際にこれ再現不可能だろ〜と思ってしまうほど

陰陽師と同じく、呪詛や蠱毒の描写は細かくかつわかりやすく描かれていてリアルな触感。釜茹での過程とかね、

そして、セリフは陰陽師に比べて格段に長い

問答での密教の教えや宇宙の捉え方は読んでいて面白かった

 

物語の中で空海はストーリーを回す役であって、空海が何かすることで話が動くわけではない

特に中盤以降、玄宗皇帝楊貴妃の時代と物語が行ったり来たりし始めるので空海もある意味読者。

夢枕獏さんは空海と一緒に物語を歩いていたんじゃないかなーとすら思った

 

この空海の立ち位置が、小説とメディアミックスの差異、言語だけで表現することの無限の可能性を示している気がする

この小説において映像は原作を超えられなかったのだ

観客や視聴者は原作小説を読んでから映像を見るとは限らない

前回の記事であまり両作品とも口コミが良くないと書いたが、メディアミックス化された作品のみで受け取ると難しい評価になってしまうのだろう

これも原作者 夢枕獏が暗に伝えたかったことだと思うのは斜めに読み過ぎだろうか?

 

 

歌舞伎版「幻想神空海」感想

空海幸四郎、逸勢松也、楊貴妃雀右衛門

丹翁歌六、黄鶴彌十郎

非常にコンパクトに全体をまとめ、春琴(児太郎)化猫〜仲麻呂の書状〜墓あばき〜貴妃のくだりは義太夫節でタッチをつけて〜宴という流れ

 

物語の分量で言うとナウシカくらいの時間(昼夜公演)がほしいし、同じ菊之助主演のマハーバーラタ戦記くらいの演出がほしい

予算が足りないような地味なシーンが多い印象を受けた

しかも、この収録回だけだったのかもしれないけど、なんだかすごく空回りしていて、客席降りのあたりはセリフがとんでる感じがする(演者が半笑いだから)し

小道具の磁器製の椅子が、立ち上がった瞬間にカランカラーン…って軽そうに倒れて松也さんが慌てて直しに行くし

観劇してた獏さんどう思ったんだろう

演出面では、登場シーンが地味すぎて(大体が歩いてやってくる)歌舞伎って登場が華って感じがするのに、いい所皆殺しすぎる

プロジェクションマッピングとか宙乗りとか

演出も音楽もいかようにも出来ただろうに。

松也さんはともかく、幸四郎さんの役作りがちょっと軽い感じがする。原作からするともうちょっと古典作品のような居住まいでいてほしかった

 

米吉くんの玉蓮が美しかったのは確か!(琴実際に弾いてた?)

 

 

映画版「空海KU-KAI 美しき王妃の謎」感想

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さて

日本公開版とインターナショナル版でめちゃくちゃ印象が変わります

上は日本版。

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こちらがインターナショナル版。

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別パターン。

前にも言及してますが晴雅集「陰陽師 とこしえの夢」@Netflix - すきなもの雑記

中国クリエイションのしっとり、繊細、静まり返った中の美、みたいな空気感が好きです

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このシリーズもすごい

公開当時ポスターの可愛らしさでTwitterが盛り上がっていた記憶がある

 

映画版はストーリー上の重大な改変点があります

逸勢は出てきません

日本の僧侶と中国の詩人がタッグを組んで玄宗楊貴妃の悲劇の真相を探る、というストーリー

映画でバディを組むのは白楽天です。

 

舞台裏は知らないけど、これ日中で製作めちゃくちゃ揉めたんじゃないの〜?と勘繰ってしまう。

中国では空海って誰ソレなんでしょうね

なのでタイトルを「妖猫伝」に変え、貴妃を守った黒猫をメインに見せた

そしてそれでも見れてしまうのがすごい

なんと行っても一番の見所は宴!

中国VFXの総力を結集させた映像美で本当に美しい。思い描いていた想像の世界が、こうやって素晴らしい映像になっているだけで感無量です

そして黒猫で物語の余韻をっかり感じさせるのは演出の力。

ラストの青龍寺のシーンもすごく良かった。

 

主演は染谷将太さん

中国語がどうなのかはわからないけど、意欲的に演じていたのでは

(私のイメージは鈴木亮平さんですが)

中国の作品はどうしても映像美に意識が行ってしまって役者さんの個性が見えにくい…

映像技術二の次の日本とは対象的で面白いですね