すきなもの雑記

話したいことを話したいだけ

シネマ歌舞伎「鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)」

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かっわいい色〜!!!!

大好き!

展覧会などもですけど、チラシのデザイナーさんて全体的に魅せるの上手いですよね

モチーフを配し、色調を統一させて、素材を切り取って。

 

ちょっと話逸れますけど…

韓国ドラマの日本輸入版への改悪が一部では言われています(シリアスドラマもテキトーにLOVEなサブタイつけてピンクとハートでまとめてしまう件)が、あれ最初にフォーマット組んじゃうとなかなか抜け出すの難しいと思うんですよね…

デザイナーは素材を素敵に見せる技術は持っている

しかし発注者ではないので「いつものとおりに」と言われたらそう作るしかない…

要は発注する側(主にプロデューサー)の意識次第なんですけど、もうこれは個人のセンスに頼るしかないので…

 

 

展覧会やこういったチラシの場合はプロデュースする方たちに

「より素敵なものを作ろう!」

「内容に見合ったものを作ろう!」という意識があるのではないでしょうか。想像ですが。

もしくはデザイナーにある程度のコンセンサスがあるとか。

シネマ歌舞伎の場合はコンテンツとして長く残るし、未来の歌舞伎オタクがこのデザインにときめくと思うとすごく嬉しいです

 

 

演目としての「鰯売戀曳網」

〜あらすじ〜

鰯売の猿源氏は五条橋東院の傾城・蛍火に恋煩い。鰯を売る声にも覇気がない

心配した父は、猿源氏を上洛予定のお殿様にして東院に乗り込むことを思い立つ

 

東院では傾城たちが貝合わせの最中

不審な庭男が様子をうかがっている

殿様は合戦の話を聞かせてくれと傾城たちにせがまれるがもちろんできるはずもなく、魚の名前をもじったニセの話を面白おかしく聞かせる

優しくて面白い殿に心惹かれた蛍火だが、うたた寝する殿から鰯売の呼び声の寝言が。

実は蛍火はお姫様。かつて鰯売の呼び声に聞き惚れて城を抜け出したところ人買いにさらわれてしまったのだ。

そこに庭男、実は蛍火の城の使いが登場。

持参金で蛍火は自由の身に。

そして猿源氏とともに夫婦の鰯売として東院を後にするのであった

めでたし。

 

 

 

 

私が歌舞伎に興味を持ったときにちょうど放送していたのが「鰯売戀曳網」でした

よちよちの歌舞伎オタクの赤子が初めて見た広い世界です

そして赤子には鰯売の世界があまりにも優しくて…

ご都合主義のハッピーエンドがわかりやすくて幸せで「歌舞伎って話わかりやすくて面白い〜」と思っていたのでした

(直後に三人吉三の因果と闇の世界を見たので、今思うと飛び込み台から沼に突っ込んだような高低差がありますね。勢いつくわけだわ)

演目としては新歌舞伎に分類されると思います

余談ですが

「鰯売戀曳網」

「山名屋浦里」

「心中月夜星野屋」の3作を勝手にハッピー歌舞伎御三家命名しました(今)

 

共通点としては

・1時間程度で完結する短めの演目

・話に起承転結がある

・セットが派手め(遊郭とかお屋敷とか橋とか)

あと、基本的には中村屋中心の座組だと思います

 

「山名屋浦里」はたしかタモリさんがブラタモリで聞いた話を鶴瓶さんに話したことから落語化→勘九郎さんが気に入って歌舞伎化

という経緯だったはず

 

「星野屋」は七之助さんが粗筋を気に入って…とかだった気がする

昨年12月の感想で触れています

 

ハッピー御三家、何がいいかって

ご新規さんにオススメしやすい演目なんですよね

短くてわかりやすくて派手

私が鰯売で身をもって感じました

 

 

シネマ歌舞伎「鰯売戀曳網」では

シネマ歌舞伎版では玉三郎さんのインタビューが挿入され、彼が寵愛を受けた戯曲の作者である三島由紀夫勘三郎さんとの思い出を振り返っています(が、玉様は台本めっちゃ読んでるっぽい😂)

 

配役

猿源氏:勘三郎

蛍火:玉三郎

猿源氏の父:彌十郎

猿源氏の馴染みの馬喰:幸四郎

庭男実は次郎太:片岡亀蔵

 

私的見どころが何箇所かあります

1.馬に乗った猿源氏が「それでは殿様」に応答して扇をばっと開くところ

2.蛍火登場の襖

3.膝枕した殿様の寝言に「他の人の名前を呼ぶなんて妬けるじゃないか」と言いながらはたく蛍火の可愛い嫉妬

4.ラストの花道一連

ラスト、定式幕が8割閉まり花道上で二人のエピローグがあります

観世音さまに御礼→お互いの着物の乱れを直す

→猿源氏が美しい蛍火に惚れ直す→踊りながら花道の東西にお辞儀→手が触れてちょっと照れる2人→花道を駆け抜けて退場

初々しい心情が描かれていて、心が洗われる気持ちになります

 

次郎太がコメディっぽい役で全体の温度を上げます。シネマ歌舞伎では亀蔵さんでした。盤石。

幸四郎さんが馬を可愛がって馬役を気遣ってるのがわかります。

馬大変そう、出番長いし猿源氏乗せるし

蛍火は家臣次郎太には主君らしい物言い

恋する猿源氏にはしおらしい妻、という2面性が面白いです

猿源氏は蛍火を前にして挙動不審になったり、

海産物合戦を蛸の真似をしながら踊ったり、

合戦の演奏が始まりそうになったら義太夫に始めちゃダメって合図送ったり

憎めない役です

 

 

ちなみに

「鰯売戀曳網」は中村屋ご兄弟で2度再演されています

両方見ましたがお二人の演技が勘三郎さんと玉三郎さんに生き写し。

特に猿源氏の勘九郎さんは声まで似てる

そしてとにかく七之助さんの蛍火が美しいです

ラストで猿源氏が蛍火にしみじみと「まあ美しい…」って言うんですけどあれ、勘九郎さん素だよね?

本当にガラスに入った日本人形が動いているみたいです