すきなもの雑記

話したいことを話したいだけ

コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」

f:id:em378794:20210526213032j:image
かつて「三人吉三」も上演したコクーン歌舞伎

(私は映像で見ただけだけど)

チケットも争奪戦でしたが、松竹歌舞伎会でなんとかゲットできました

以下演出についてネタバレがありますので未見の方はお気をつけください

 

 

 

 

 

〜夏祭浪花鑑あらすじ〜

玉島磯之丞は放蕩息子。

立ち直らせるために磯之丞(虎之介)の母から命を受けたお梶(七之助)は物乞いの徳兵衛(松也)に協力を仰ぎ、それが元でお梶は徳兵衛の恩人となる。

お梶の夫、団七九郎兵衛(勘九郎)は喧嘩が元で牢に入れられていたが玉島様のはからいで出所。

玉島家への終生の恩義を誓う。

団七と徳兵衛は街で出会って喧嘩になるが、お梶がとりなし二人は義兄弟となる

(というのが基本設定)

 

磯之丞は立ち直って奉公していたが、奉公先で人を殺し、団七の知り合い三婦(さぶ・亀蔵)の家に恋人の琴浦(鶴松)と共に匿われている。

そこへ徳兵衛の妻お辰(松也)がやって来たため、三婦の妻おつぎが「磯之丞を地元の備中へ連れ帰ってほしい」と頼む。

しかし三婦は「お辰には色(気)があるから間違いが起こる」と反対する。

お辰は引くに引けず、火鉢の鉄弓で頬を焼いて「これでも色があるか」と応酬。その心意気をかって磯之丞を託す。

そこにお梶の父義平次(笹野)が団七から琴浦を連れ出すよう言付かったと現れ琴浦を連れ去ってしまうが、すれ違いで現れた団七は身に覚えがないという

琴浦に横恋慕する佐賀右衛門が義平次に命じたと悟り連れ戻しに行く団七。

団七は義平次を斬ってしまう。

祭りの混乱に乗じて団七は逃亡するが、徳兵衛はその場に残された団七の雪駄を拾う。

 

徳兵衛は義平次を殺したのは団七だと勘付き、何気なく逃亡を促すが団七は聞かない。

徳兵衛はお梶に迫り、団七からの離縁を取り付ける。

舅殺しは重罪。離縁して少しでも罪を軽くしようとしたのだ。

しかし追手はそこまで迫っていた…

 

 

 

実は……

 

途中の演出で、現実に戻る出来事があって。

義平次ともみ合いになるあたりで照明が蝋燭のみになるんです

後見さんが持って役者と一緒に移動してくれるんですが、それでも後方席からだと暗すぎてどこで決まってるのかわかりずらくて、拍手したいけどもどかしい感じでいました

その後、団七が祭の集団と一緒に逃げていくんですが、背景が外され舞台後方正面の搬入口が開くんです

似た演出がシネマ歌舞伎の「め組の喧嘩」に出てきました

あの時はラストシーン。正面にはスカイツリーが見え、芝居の時代と現代をメタ的に繋いだ演出だなと感じました

 

コクーンの場合は搬入口なので、広がるのはアスファルト。しかも間の悪いことに一般の人が道路を横断していてこっちを見ていたんですね

その瞬間に「わたし何してるんだろう?」って思ってしまって。

殺しの場がちょっともやもやした感じだったのもあって、そこで完全に集中が切れてしまいました。

こんなご時世にわざわざ人の多い渋谷にでかけていって、席に余裕があるとはいえ密な空間で、それなりのチケット代を払って…という感じに。

切れちゃうとなかなか戻れない。

演出って難しいんだな〜と思いました。

 

 

でもそれ以外は素晴らしくて!

「三人一座で出かけようか」的な話の場合

ご兄弟と松也さんの組み合わせが一番しっくりくる気がします。

勘九郎さんと松也さんの肉付きの良さが最高。

徳兵衛がお梶を押し倒し(服着てなかったよね?)、すんでのところで団七が現れ静止した場面、あの静けさがすごく怖かったです

浴衣を縫うからって言って狭い畳で他所の男が服を脱ぐんですよ

夏の終わりの影の濃い夕暮れで…

何もないわけなくない!?!?

脳内に「団地妻」というワードが浮かびました(なんで)

もっときちんと集中して見たかった😭😭

あの冷たい目が勘九郎さんの真骨頂であり魅力である…(徳兵衛の思惑は察していたはずだけど)

横になる二人とまっすぐに立つ団七と格子と柱と縦と横のラインが非常に美しかったです

 

今回、全体をぴりりと締めていたのは亀蔵さんだと思いました

声の強弱が効いていてカタギじゃない感じが見えてかっこよかったです

松也さんはお辰で出てきた瞬間から声が枯れていましたが裏返らずさすがでした

私のご贔屓、中村鶴松くんは傾城琴浦と役人左膳の2役。

相手役の虎之介くんは年下だし、やりやすそうな環境でリラックスして演じているように見えました

上演10分前くらいから舞台上でちょこちょこ芝居の準備=祭の準備が始まっていて、直前に宮司さんが来て舞台の成功祈願=祭のご祈祷があるんですが、そこでわらわら集まってきてお話してる感じとか、三婦の家で磯之丞をひとりじめしたい♡な琴浦とか、佐賀右衛門を袖にする琴浦とか、色んな表情が見れてよかったです

 

割と単純なストーリーのつもりでいましたが、書き起こすと長いですね。

今回の上演時間は幕間なしの135分。

通してこの時間なので、相当端折っていると予想されます。

そのため、あまり世界観に浸かれないまま幕引きになってしまいました。

たぶん大詰ありの3部もの(東海道四谷怪談とか桜姫東文章とか)は幕間ありで4時間くらいがちょうどいいんだと思う。

1745年初演の古い作品なので、当時の考え方が反映されていると思います。

根底にあるのは「舅殺し」への因果。

因果と憎しみの連鎖(と物探し)が出てくると古典を見ている!!っていう感じがして盛り上がります。

殺しへのきっかけになるのが団七の額への傷。

男は顔の傷を気にするのに、女は顔を焼いて心意気を見せるのがヨシとされているのが不思議なところ。