公開が1年半延期された本作
原作は子どもの頃に読んだっきりでほとんど覚えていません。むしろ「新選組血風録」の方を面白く読んだ記憶があります
なので、ストーリー面で「あの場面がどうこう…」という感想は特にありません
注目していたのは幕末の京都の描写で、この点に関しては映画館で見ていてとてもワクワクしました
特に土方が怪我をしておゆきの家にたどり着くあたり
口コミで「映像が暗い」というのを見かけましたが、わたしはこれでも明るいなと思いました
歌舞伎でのだんまりを見ていると、当時の夜は明かりを消せば1m先でも見えないような視界だったはず
現代では失われた感覚なので、それを映像の世界で少しでも味わえたことはとても良かったです
芹沢一派の粛清と池田屋の斬合いの臨場感も見ていて新鮮でした
襖の上から滅多刺しにするとか、幹部を物理的に人垣で囲み白刃から守るとか
いくら武士道を重んじると言っても生きるの死ぬのとなった時にはなりふりかまっていられない…そんなリアルな描写で、実際にどうだったかはわからないけど、こうだったかもしれないと思わされました
修学旅行の自由行動で行った池田屋跡、私が行ったときにはパチンコ屋になっており、なんで壊されちゃったんだろうと惜しく思ったこともありましたが…こうして見ると、残しておこうと思う方がおかしいわね…
と、歌舞伎を知らないままの私だったら以上の感想で終わりでした
歌舞伎を見て色々知るようになり、当時作られた演目や当時の浮世絵、当時の作家河竹黙阿弥に触れるにつれ、実は江戸と現代は地続きで、その身近さがさらに歌舞伎の面白さに繋がっているとわかりました
これはコロナ禍がなければ気づかなかったかもしれないこと、人生ってわからないもんです
なので、三人吉三と同じ時代(私にとっては遠くても地続きの時代)の京都で、思想のために人を斬って、それがまかり通って、市井の人の暮らしには無頓着なのが当時の京都と新選組だと思うとなんというか…この人たち、誰も布団で死んではいけないな、という気持ちになりました
創作物として取り上げられるような、強くてカッコいいだけでは私の気持ちは収まらないというか…
歌舞伎の演目で新選組って聞いたことないですよね
それこそ伊勢音頭は当時の事件をスピーディに舞台化していたのに
ご時世的にタブーだったのか、作家の筆が進まなかったのか…
確か新選組血風録の中に相撲取りと隊士(土方さんだったかな?)が揉めて斬合いになった話があった気がしますが、それが頭に残っていて、双蝶々曲輪日記の角力場を見たときに「お相撲さんのステータスってこんな感じだったんだ」と思いました
最後に役者の話
ダントツで山崎烝役の村本氏が良かったです
エンドロールが追いきれなくて一緒に見た友人にあとから教えてもらいました
最初噺家さんかなと思って見てた😂
今なら間に合うから…50代以降に怪演する俳優になれるから…路線変更してほしい…!
絶対撮れ高がよかったから出番増えてると思う
容保役の右近くんも熱演で、あそこまで出演シーンが多いとは予想外でした
若いながらも滅びゆく潔さを持っていて、今までは穏やかな殿様くらいにしか思っていなかったので見方が変わりました
慶喜役の山田裕貴氏、ジャニーズなのかなと思っていたらどうやら違うようで、追い詰められ狂っていく感じが良かったです
出演は少しでしたが、暗い河原でも目がギラッギラしてた
時代モノやっぱり合うと思ったので、ぜひ色んな作品に出てほしいですね