すきなもの雑記

話したいことを話したいだけ

まるで、歩かなくてもいい美術館「フレンチ・ディスパッチ」

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本当に本当に美しい映像たち

編集部のビルの、まるでイラストのような造形。それぞれの部屋のインテリアも美しい

ルシンダがタイプライターを叩く部屋やライトが校正の話をするピンクの壁紙の部屋、ぴっしりメモの貼られた掲示板。冒頭のシーンを見ているだけでうっとりしてしまいます

そこから始まる小品たちの不思議な世界。

 

なんだか映像がカメラワーク共々やってきて去っていくような感じ。私は動いていないのに、作品が動くことで色んな場所を動いている気分になりました

ということでタイトルの、歩かなくていい美術館。

 

何と言っても映像のカラーグレーディングがすごい

ネムイ色合いなのに映像ははっきりと色づいていて、これがフィルムによる影響なのかデジタルで表現するにはなかなか難しい質感だと思います

今回のお話は雑誌の最終号に掲載されるライターの寄稿を映像にしたものなので、回想がモノクロで、しかもその尺が結構長いんですよね…それだけが残念カラーで見たい

セットが1:1の画角に合わせて小さめに組まれているのがカワイイ

ベニチオ・デル・トロ出演の芸術講義の章では刑務所の乱闘で小物の飛び交う中ストップモーションになったり(役者は止まったフリ)、

またティモシー・シャラメ出演の学生運動の章ではカフェの壁が真ん中から分かれてミュージカル風のいい雰囲気の場面になるし、かと思えば本当に劇中芝居が始まるし、

警察署長の章では逃走シーンがアニメーション!だけどこれも可愛らしくて見れちゃう

カット割も、あえてなの?っていうのが散りばめられてて手が込んでます

冒頭のお盆を回転させながら飲み物を注ぐ手元のカットとか、テーブルを左に振り向いたり右に振り向いたりするローバック・ライトとか…

何しろ誰も愛嬌的でないのが、私は好きです

真顔なりの面白さ、無言のおかしさがウェス・アンダーソンの演出によく映えていると思います

 

モーゼスの青年期を演じたトニー・レヴォロリくんの黒い瞳が印象的ですよね

彼はグランド・ブダペスト・ホテルにも出ていてベルボーイの衣装がとても似合っていて印象的でした

様々なベースを持つ役者がごちゃまぜになっているのもウェス・アンダーソン作品の魅力的な点だと思います