すきなもの雑記

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令和四年 8月納涼歌舞伎で休演に反撃の一手!

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後のために覚書。2022年の夏はコロナ禍で休演が相次ぎ初日の延期や休演明けの公演中止や劇場前での中止発表など、さまざまにオタクの心を踏みにじっていきました

歌舞伎座は奇しくも8月に出演者の部またぎを解禁。それが裏目に出て休演ドミノで途中全ての幕が閉まる事態に。しかし8月は元々若手中心の挑戦的実験的な興行の月。すぐにウルトラC級の代役を当て休演を最小限に留めたのでした

 

1部

新選組

わたしはあまり成駒屋三兄弟売りには興味がないので題材の強さにチケットを取ったようなものでした。すると観劇の日を前にして休演→主演変更、しかも代役発表は自分の観劇の前日。代役情報を耳に入れずに幕開きでジャンって見たら楽しそうだなとは思ったんですが、さすがにネット記事でネタバレ。開演前に代役アナウンスもあるので、知らずに見るのは相当難しいですが。

というわけで、歌之助さん福之助さんの主演コンビは中村屋のご兄弟の代役に。繰り上がりで近藤勇片岡亀蔵さん。土方さんは役なしで沖田さん役の虎之介さんが台詞追加。八重は鶴松くん休演で中村祥馬さんの代役。

あらすじ

父を殺された丘十郎が新選組隊士になり、屯所で出会った相棒大作と共に下手人を探す。しかし仇の庄内伴蔵に内通していたのは実は大作で…

作中、丘十郎は八重という娘に仇として命を狙われます。その時の「仇を討つことで自分が誰かの仇となる。仇討ちをすることはいずれ負けるいうこと」という(意味合いの)台詞にはなるほどなと思いました

映像で見てきた中村屋兄弟のキレのある立ち回りを初めての生で見ることができて感動。勘九郎さんの影のある役が大好きなので「丘ちゃん…!」と親しみを込めながら同時に死を願う姿は鳥肌ものでした。

 

闇梅百物語

元々は早替わりの演目だそうです。主人公が姿を変えながら妖かしの世界を旅するっていうのも楽しそうですね

白梅の七之助さんも美しかったんですが、雪の場面の新造の千之助さんがめっちゃきれいで見入りました

 

2部

安政綺談佃夜嵐

「明治時代に書かれた世話物」。青木(幸四郎)と神谷(勘九郎)が佃島の寄場(刑務所?)を脱獄して親の敵を探す話。途中で青木が甲州の嫁の元へ寄ると、なぜか神谷の手下の清次が押し入る。そこで親を殺したのは神谷の仕業だったとわかり…

黙阿弥が書いた話の多くは泥棒や人殺しといったワルが悪びれない物語でした。今作は黙阿弥の弟子である12代守田勘弥の作。なんというか…盛り上がりに欠けます。そもそも捕まったきっかけや両親の殺しの場面がないので青木がワルなのかよくわからない(政治犯なのでおそらくワルではない)。ラストの洞穴での立ち回りが地味めで、どちらも死なずお縄を頂戴して幕引きになるのが平和です。大谷竹次郎が「後半何とかせい」って言ったのもわかる

ちなみに私が見た日は本来の配役でしたが、猿之助さんが何日か幸四郎さんの代役を務めました。丸一日しか練習する時間がなくて主演ですよ、すごない?

 

浮世風呂

幕開きの朝日の入る湯屋が印象的。三助って当時は花形の仕事だったんだろうな

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「肌競花の勝婦湯」豊原国周

そんな三助に恋しちゃうなめくじちゃん。頭に触覚、着物にはなめくじって描いてあります。なめくじちゃんは花道で塩をまかれてしまいますが健気です

 

3部 

弥次喜多流離譚

何回かチケットを買い足したので本来の配役と代役で見ました

これまで何度も書いている通り、澤瀉屋の充実ぶりには毎度感心しているので、代役バージョンがやはり楽しかったですね。そもそも代役の当て方が変化球すぎる笑

弥次さん幸四郎→青虎は演出補なのでわかるとして

政之助團子→隼人もわかるとして

梵太郎染五郎→猿弥って何なのよ

世紀の美少年の代役に半端な人をつけてもしょうがないって思ったんですかね。この代役のおかげでここに1枚チケット買い足した人がいるので、その策は成功だったと言えます

猿弥さんは舞台度胸と舞踊のスキルがあるので、ダンスバトルになっても見劣りしないのが良かったです

1部のラストは観劇を始めてから初の大がかりな本水。幕が閉まっていても水の音がすごいので、開いた瞬間は圧巻です。紀尾井町家話より、水温がぬるいと装置に藻が生えてしまうので冷たくしているそうです。だからかな、けっこうみんな動きまくっている。わちゃわちゃで幕引き。

2部は踊り比べという名のダンスバトルがあります

エスト・サイド・ストーリーのような振付から始まり、新悟さんのカップラーメンをくっつけた前太鼓に團染の供奴に代役の笑三郎笑也のはたきを藤に見立てた藤娘に最後は弥次喜多の三番叟までイロイロと見られます。鷹之資さんはスケバンぽく学生鞄を持って踊ったりムネと挑発し合いながら踊ったりしていてそこだけは鷹之資さんロックオンでした。皆さん踊りがうまいんだけど、一人だけ滑らかさや見せる角度の美しさが明らかに違う…!身長や手足の長さは問題じゃないんだな〜と改めて思いました

本役だとその後の團染の早替りも見どころです。もう本当に狙いが明確で、1.踊れる若手にダンスバトルの見せ場    2.團染は興行で早替りの経験 だったんでしょう。新作歌舞伎としては好きなテンションではないですが、たまにはこういうお祭り的な演目があると楽しいですね