すきなもの雑記

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愛すべき歌舞伎莫迦たち 令和四年10月大歌舞伎

10月はまさに歌舞伎月間でした。コロナ禍以降でこんなにあちこちで魅力的な興行が行われたのは初めてかも。本気で、歌舞伎のオタクをやるには副業でもしなければならないのかと考えました

 

1部

鬼揃紅葉狩

荒川十太夫

 

紅葉狩は7月に続いて今年2度め

 

弥次喜多でやりたい放題だった歌舞伎莫迦のお兄さんたちが、本気で作品に取り組んだらすごいんだぜの巻。幸四郎さん維茂の雅やかで景色のいいこと。相変わらずの猿弥さん青虎さんのニコイチ感。

ところで、今回の紅葉狩は三代猿之助四十八選なので7月国立劇場版と演出が異なります

紅葉狩は昨年12月に玉様バージョンも見たけど、あれもだいぶ違っていたので「戸隠山に紅葉狩に来た維茂を襲う姫の姿をした鬼」という設定が守れていればオッケーなのではないでしょうか

ロックオペラモーツァルトモーツァルト!とアマデウス(映画)の違いと似たようなものかなと解釈しました

前シテのような姫の舞踊までは展開にほぼ変わりなし。7月版は維茂が上手、従者が下手で完全に分かれていましたが今回は上手に集まっていました。酒宴もおとなしめで、どうだ一杯?アどうもどうも、みたいなものはなく粛々と側女に酒を注がれています

さて側女といえば、今回の豪華な侍女たちと言ったら!種ちゃんの女方は舞踊公演の鏡獅子以来なんですが…?お化粧がめちゃくちゃうまくなっとる…!カワイイ!!出てきた瞬間可愛すぎてびっくりしました。鷹之資さんは白塗りを見てしまうと今はまだ若干タカミを思い出してしまうのですが…まあいいよ。タカミも踊り上手かったもん

中心にいるのは美しいお姫様。詐欺みたいに美しい。でも眠り始めると途端に鬼の顔を出すギャップ。私がいた日は会場で笑いが起きてましたが、多分それでいいんだと思う。今回のバージョンは。

狂言に当たる部分、山神は初演した九代目團十郎が舞踊の才のある六代目菊五郎のために作った役だと言うことはなんとなく知っている。猿翁さんなら早替り2役とかにしちゃいそうだけど、そんなことはなく山神は登場しません。そのかわり巫女として雀右衛門さんと笑三郎さん笑也さんが維茂を起こしに来ます

ラストの立ち回りは猿之助さんと幸四郎さんのなんと楽しそうなこと。松緑さんと梅枝さんバージョンは元々の仲の良さゆえの呼吸の合い方だったように見えましたが、この二人の場合は立ち回りが大好きな役者✕2ゆえの圧倒的パフォーマンスでした

 

荒川十太夫

堀部安兵衛介錯を勤めた荒川十太夫の物語

しみじみと良かったです

神田伯山さんのYouTubeチャンネルで鼎談会のドキュメントを配信していて、歌舞伎座の楽屋や鳥屋の中が見られて楽しいです。当たり前だけど楽屋って広いんだなあとか。

あえて言うなら、泉岳寺の参道の賑わいとかで集団芝居の見せ場があるといいと思いました。芝居ならではの膨らみとして。

 

3部

加賀鳶

 

全くノーマークだったんですが、あらすじを読んだらめちゃくちゃ黙阿弥…!なので見てきました。客は少なかったね。確かに。

見終わって、芝翫さんはニンだったけど何故に加賀鳶…?と思ってあらすじ読み直して思いました。これは通さないとあかんやつでは?と

梅玉さんの松蔵が通し役なんですよね。鳶の縄張りを軸にしたワル達の化かし合いなので通しがかかるのを待ちます

最後のだんまりはすごく良かった。3月の鼠小僧のだんまりも良くできていたけど、このだんまりも見せ場として緊張感があります。どちらも黙阿弥ですね。

 

さあ来月からは襲名披露興行です。

個人的には菊之助さんの揚巻が見られればそれでいいんだけど、冷静に幸四郎猿之助勧進帳も見たいし勘九郎菊之助の二人道成寺も見たいんだよな…

何というか、「トップさんには興味ないけど組としての魅力はものすごく感じる宝塚」みたいになっています

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