ドラマも映画もフィクション作品はほぼ触手の動かない私ですが、時代物は別…ということで時代物の映画を3本ほど見ました。こちらでまとめて紹介します
※ネタバレしてます
「侍タイムスリッパー」
インディーズ映画ということで、シンプルなお話で面白かったです。侍が現代にタイムスリップしてしまい、戸惑いながらも状況を受け入れ生活していたところ同じくタイムスリップしていた仇敵に遭遇、撮影している映画の中で決闘をすることに…というお話。金銭的に余裕がないと選曲さんを使えないんだなと言うことがよく分かりました
「十一人の賊軍」
右近くんが出演しているということで鑑賞
石油に火をつけてぼーっと見てるんじゃない!っていうのだけ突っ込みたかったですが、それ以外はよくできていました
特に。中盤以降の兵士郎役仲野太賀さんが良い。良すぎる。かの時代の空気を出せる素晴らしい役者さんだと思いました。映画見て引きずるってあまりないんですが、久しぶりに、ふとした瞬間にしみじみ良かったなあと思い出すなどしていました。何が良かったか。発声や立ち回りや朴訥とした空気感も良かったんですが、一番は設定かなと。現代の作品の人物造形って高確率で「愛する人のため」っていう大義名分が存在します。この作品の中でも、妻のため、許婚のため、という人物が描かれています。しかし兵士郎はそこがすっぽりなくて、ざっくりと「お国のため、未来のため」なんですね。それが何となく武士道に通じるように思えました。古い脚本というのが良かったのかも。仲野太賀さんは2026年の大河主演。楽しみです。
時代物は本当に空気感を出せる出せないがぱっきり分かれてしまいます。右近くんは歌舞伎役者なので江戸時代の農村の所作は分かるものとして、やはり頑張ってキャスティングに力を入れてもぱっきり分かれちゃうんだなーというのが感想でした。山田孝之、阿部サダヲといった役者が真ん中に立って作品を引っ張れる理由っていうのはこういうところなんだなと思わされました。というわけで、大義名分に共感できず、空気感を出せない役者さんが真ん中に立つことが多い現代物のフィクションはあまり見なくなってしまいました
「八犬伝」
これも、右近くんが出演するということで鑑賞。
なかなか主題をつかむのが難しいんですが、滝沢馬琴の生涯と並行する八犬伝の物語を描きながら「虚」と「実」の真理に迫る、みたいなお話なのかな。
作中には北斎が椿説弓張月を褒め称えるところがありますが、私は歌舞伎では見たことがありません
以前国立劇場のポスターコレクションで見かけたのでまたかけてほしい…!
八犬伝はお正月の国立で一度見たんですが
コレ真面目に予習していたのが今になって効いてきた感じがしました
丁寧に粗筋をなぞっており、扇谷定正(を操る玉梓)との関係性は歌舞伎よりわかりやすい。ただVFXと衣装が安っぽくて果てしなく2.5次元寄りになっており、これがキャスティングなんだなと思いました。
馬琴役役所広司と北斎役内野聖陽は穴もなく時代の空気も人物造形も完璧。芝居小屋に「四谷怪談」を見に行くシーンです。歌舞伎のオタクならほぼ知っている、忠臣蔵の中に挟み込むやたら長い芝居だとか、雨戸の開けしめだとか、当時の空気感が出ていて非常に良かったです。右近くんは菊五郎役でお岩様を演じています。このあと、馬琴と北斎が菊五郎に挨拶に行くんですが、奈落を通る際に大南北と馬琴が顔を合わせて問答を行うシーンかあります。ここがこの映画の最も引き込まれたシーンでした
ぬうっと奈落の上から顔をのぞかせた気味の悪い南北(立川談春)に、忠臣蔵の物語なんて信じちゃあいないくせにと反論する堅物の馬琴。この辛く苦しい世に折り合いをつけて江戸っ子はどう生きていたのか。それが垣間見れたようで興味深かったです
年明け以降も時代物映画の公開を控えているようなので、またいい作品に出会えることを期待しています