浅草組は2024年で前の代が卒業となり、莟玉さん、橋之助さんを残して新しい世代に入れ替わりました
30代の気力体力経験値の充実期に入った先輩たちとは全然違っていて、グレイテストカショーマンてやんややんやするには程遠い真面目な感じ。もちろんそれで良いんです。なので、硬めの太十を昼夜かけても、観客もヨシ!と受け止めていました。私も真剣に見ましたし新しい発見もありました。
それでは新しいメンバーのこれまでの印象と今回の浅草の感想を…
まず一番年長中村鶴松くんは一番観劇の機会がありご贔屓さん記事も書いています。丸顔で若く見えるので、若手の傾城や町娘がお似合い。役で言うと籠鶴瓶の初菊や俊寛の千鳥、野崎村のお光ですね。踊りも良くて、自主公演の鏡獅子で2枚扇の扱いがバッチリ決まってました
今回の太閤記十段目の十次郎が良くて、本人のまったりした感じと相反する悲劇的なお役も合うのかも。頭取さんか大道具さんが幕開き前に「おまちどうさまでした」って言うのが聞こえてくるんですが、道行で「よろしくお願いします」って返してるのを初めて聞きました。たぶん鶴松くんではないかなと思ってます。
次に観劇の機会が多いのは染五郎さん。配信などを聞いているとダークな役が好きなんじゃないでしょうか。何となく俳優のロバート・パティンソンが重なります。今まで表にはなかなか見えてこなかったけど、歌舞伎でのやりたいことがだんだんとファンにも伝わってきていて、今後も幸せな関係が築けそうです。俳優祭の松王丸が私の中でターニングポイントでした。今回の光秀もその系統ですごく良かったですよ!若手ではお父さんと系統が同じ方は珍しいのでは。團子ちゃんもそうですが、染五郎さんも今のところあまり映像には興味なさそうです
左近さんは国立の里見八犬伝で扱い良!と思っていたらあれよあれよと抜擢の連続。四季での女方の舞踊を見て、小柄だし女方いいなと思っていたらその次くらいに玉様と吉野川の雛鳥を演じていて、それがまた良くて驚きました。今回の時姫は時蔵さんがご指導されたらしく「まだまだだけど、雛鳥をやっただけあって着物の扱いが良い」ようなことを言っていて、むしろステップとして雛鳥が先に来るんかい、と思いました。左近さんもまた踊りがとても良いし、芝居中の所作が丁寧な役者さんだなと思っています。
しかししかし、私はこの座組の中で中村鷹之資さんの踊りが一番好きです。とにかく形がきれいで腰が低い。回転で頭の高さが変わらない。初めて三社祭を見た日から期待を裏切られたことは一度もないです。舞踊は何でも素晴らしいのですが、思い出すのは弥次喜多の舞踊。スケバンの設定?で薄っぺらい学生カバンを持って踊っていて、変化球の振付でもきらきらと輝いていました。十次郎も良かったですが、やっぱり大きい役が似合う方なので光秀か久吉がニンだと思います。この先棒しばり、太刀盗人、みたいな狂言の演目にひっぱりだこになりそう。なぜなら似合うから。大ちゃんの高坏は見たいですね
玉太郎さんは役は鶴松くんと系統が似ていると思っていて、さらに現代っぽい長い手足のシルエットが印象に残ってます。道行の鷺坂伴内は挑戦だったと思いますし、伸び代しかないので来年以降が楽しみです
あと1つだけ、配役で真柴久吉まるるはどういうつもりだろうと思って実際に見たら「お風呂沸きましたよ」の所が今まで見てきたまるると全く違う感じで驚きました。ちょっとらぶさんっぽくて。女方が圧倒的に多いまるるですが、少し前にストプレの「応天の門」に出演しましたよね。配信とアフタートークを見ていて、本当に屈託なく人と関われる方だと思ったし、そういう経験から歌舞伎以外のエッセンスを感じられるようになってプラスになったんじゃないかなと勝手に思ったりしました
橋之助さんも大きい役がどんどん似合う年齢になってきたので今後が楽しみです。