新国立劇場の通しに加え、放送もありましたので追いながら感想を書いていきます。最近中継や配信を見ながら感想を書くのは、全景で見るのと違う魅力や発見があると思うからなんです。劇場で見る場合は俯瞰で見れるような席が好きですが、それだとやはり役者さんの息づかいまでは感じられません。その点が映像だと前列の被りもなく鮮明です
特に時蔵さんは寄りで見たときの所作の美しさが素晴らしいなと今回ことに感じました
【あらすじ】
京極内匠(彦三郎)が御覧試合で恥をかかされたと一味斉(又五郎)を殺してしまう。一味斉にはお園(時蔵)、お菊(吉太朗)という姉妹がおり、お園は経緯を知って内匠への仇討ちを誓う。一味斉から豊前毛谷村の六助(菊之助)という強い男に流儀を伝えたと言われたお園は、敵かと身構えていた男が六助と知り、内匠の仇討ちを頼む。一方で内匠から騙されていたと気づいた六助は、人々の無念を晴らすため立ち上がる
毛谷村のみ良くわからないまま見取りで見たことがありましたが、通しで見ると…なるほどなかなか面白い芝居でした
まずはお園のキャラクター性。見取りだとどうしてあんなに強いお姉さんなのかわからなかったんですが、武道の家に生まれたしっかり者のお嬢さんなんですね。そんなお園ちゃんが父を殺され仇討ちを決意し、仇と瓢箪棚でド派手に立ち回り、六助に敵対したと思ったら父に許婚と言われていたため照れ照れし…ここまで書いて「らんま1/2」の天道あかねが脳裏に浮かびました。時蔵さんの解釈がキャラクターに活きているのかなと。屋敷を出る際の動きの一つ一つが音楽に合っていて気持ちよかったです
菊之助さんは六助を自分のニンに合わせて説得感を持たせ、彦三郎さんは仇として大きく見せていました
また語られ死(台詞の中で死んだと語られる)しちゃうお菊ちゃんですが配信の中で時蔵さんは「お菊の死ぬシーンを上演したかった」というようなことを言っていました。本来は死ぬシーンがあったんでしょうね。お幸(吉弥)、お園、お菊、福栄(萬次郎)と並んだ姿は優美すぎて劇場からでも光り輝くようでしたし、瓢箪棚での友平(萬太郎)の最期も含め場全体が一対一の男女の立ち回りで、大がかりな仕掛けもあり見応えがありました
内匠が悪役としてはいささか小者に感じられたので、大詰で子役のみなさんが武者として登場し立ち回りしたのは演出としてとても良かったと思いました。梅枝くんのスッキリとした立ち振る舞いや亀三郎くんの所作が目を惹きました。弥三松の秀之介くんも長丁場でしたが頑張っていましたね。弥三松をあやすところで六助が「お獅ー子ぽーいぽーい」って言っていて、何と言うか、菊之助さんが可愛すぎました。来月の毛谷村でも言うのかしら。気になるので確認してきたいと思います