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見よ、畳まれる風呂敷を!教皇選挙

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常識のようでいてよく知らない、キリスト教の世界。ローマ教皇が亡くなり次の教皇に誰を選ぶか、という閉鎖空間で繰り広げられる権謀術数を描いた作品です。

とにかくストーリーが良くできていて、広げた風呂敷が綺麗に畳まれていく快感を味わうことができます

冒頭で現れる謎のベニテス枢機卿。醜い有力者たちの足の引っ張り合い。外でテロのようなものが起きているという情報を観客に入れ、主人公トマスが色気を出し自分に投票しようと誓いの言葉を述べたところに外部から瓦礫が飛んでくる。右傾化したテデスコ枢機卿の論調に周囲は傾きかけたがベニテスの説教で教会は目を覚ます。過去ベニテスが治療しようとした病とはー?

 

途中でトマスがベニテスに「私に投票しないでほしい」と伝えると「私は正しいと思うものに投票する。あなたがふさわしい」という感じで返していました。偽りなく正直に。これがベニテスの信念です。このストーリーの外にあるであろう前教皇とのやりとりでも、きっと前教皇は同じように感じたに違いありません。そのため、枢機卿の地位を与えた。トマスがいるならば必ずベニテスを選ぶだろうという確信を持って。ストーリーがここまでたどり着くと号泣必至です。遠い関わりのない場所での話のはずなのに、いつの間にか職場に置き換わり、その清廉な魂に涙が出るのです

笠井潔の小説「薔薇の女」にへロマプロディーテについての記述があります。読んだ際に彫刻作品などを調べましたが、不思議な気持ちになりました…教皇選挙のラストに驚愕しながら、この彫刻のことを思い出したり。作品に流れる空気は共通するかもしれません

細かいところで言うと、キーポイントで亀が出てくるのは「ラストエンペラー」のコオロギみたいで良かったですし、ラストカットも印象強くてヨーロッパの映画だなぁと感じました