今をときめく井上芳雄と浦井健治の共演を古典ベースのミュージカルで見れるなんて、贅沢すぎる体験でした。「グレート・ギャツビー」も「風と共に去りぬ」もミュージカルだけでなく、原作小説の持つ味わい深い世界を改めて教えてくれた作品でした。原作をベースにした映画黎明期の素晴らしい名画にも出会わせてくれました。「二都物語」は残念ながら映画をサブスクで観るには難しいかもしれませんが、小説の評判が高いのでぜひ夏の宿題にしてみたいと思います。
そして、2人の間に入るのが我らが潤花ちゃんです。退団後のヒロインはこれが初めて。万人を受け入れ平等に優しく接する姿は「NEVER SAY GOODBYE」の頃を思い出しました。あと明治座、盆回るんじゃん…!今まで巌流島とか西遊記とか、どんだけ装置代ケチってたんだよ。今回は帝劇の代替劇場だったので高さもある大きな階段のセットを組んでいました。下の木組みが見えるようになっていて、フランスの酒場にもなるしロンドンの法律事務所にもバスティーユの牢獄にもなる、という感じでした。2つの都市の話を幕の色で分かるようにし、その幕の使い方もバリエーションがありわかりやすかったです。全体的に派手派手しくなく、しっとりと余韻を残してくれる感じで、鵜山仁さんの演出に好感を持ちました
本来は瓜二つのカートン(井上)とダーニー(浦井)。ダーニーの家出の背景が冒頭に語られ、後半の伏線となります。全体にひっそりとした静の空気が漂っており、序盤でルーシー(潤)が探し当てた父親に対して大ナンバーを披露していました。ここで既に涙。浦井さんは天保とは打って変わって好青年の出で立ち。声も爽やかな感じだし、むしろ天保ってどうだったっけ?と思うなどしました。カートンは酒浸りでどうして弁護士になれているのかミュージカルだけだと謎だけどルーシーに出会って徐々に更生していく純粋さやラストの展開に涙。このストーリーと並行して「ベルばら」や「1789」「スカーレットピンパーネル」があるんですね。群像劇ではなくフォーカスした人物たちの物語。それが恋愛ではなく徐々に親愛の物語になっていくところにストーリーの妙があると思いました。カートンがルーシーを愛する思いよりもルーシーの優しさに感謝し報いようとするひたむきな思い、ダーニーの故郷の友人たちのために命を捨てて駆けつける気持ちに心を打たれました
感動しながらも(古典原作の割に役が多いな…?)となり、宝塚で再演しないかな…?と思いながら観ていました。月組トップコンビは最近ロンドン・パリに行っていて、紀行番組を放送するのよね。ただ次回は一本もののガイズだから、連続して外部演出の作品を持ってくるかしら…?風間さんの爽やかな好青年役、見たいです。裏のない爽やかな役、ギャツビーのニック以来じゃないでしょうか
あともうひとつ、明治座は1930年頃松竹と合併した経緯があり、その関係か歌舞伎座、国立劇場と同じ世代の近代日本画の作品を掲示しています。東山魁夷や奥村土牛など。観客が休憩中に寄りかかる壁に飾られていて、肩ごしの隙間から見えシュールだな、と。