すきなもの雑記

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夏の若手祭り1部「加賀見山再岩藤」@令和三年8月花形歌舞伎

〜後のための覚書〜

8月場所開始前に猿之助さんの陽性が判明し巳之助さんの代役が発表される。20日に復帰。

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1部  加賀見山再岩藤 かがみやまごにちのいわふじ

あらすじ

かつて加賀藩で岩藤と尾上によるお家騒動があったよね〜、という所から始まり

弾正は岩藤の怨念と共に加賀藩の乗っ取りを計画、又助を騙して正室の梅の方を討たせる

一方で、尾上が岩藤の墓参りに馬捨て場を訪れると岩藤のバラバラの骨が寄り集まって岩藤の姿に。

岩藤の怨念はよみがえり宙乗りをして幕。

尾上は馬捨て場のだんまりで弥陀の尊像を落としてしまった。

花園姫は岩藤の呪いで病に臥せっているが弾正は姫に尾上の策略だと吹き込む。

岩藤の亡霊が現れ平癒守の草履で尾上を打ち据える。その時、隼人が現れ彼が拾った弥陀の尊像の威光で岩藤は消える。

一方、又助は誤って梅の方を殺してしまった事をわびに夫の大領の元を訪れた。しかし部屋にいたのは側室のお柳の方。

大領を始末しにやってきた弾正は誤ってお柳の方を槍で刺してしまい返り討ちにあう。

大詰で岩藤と相対する尾上。

心を入れ替えた大領が鬼子母神厨子を持ち出すと岩藤は骸骨に戻るのだった…

 

私が見たのは代役の巳之助さんの期間でした

初見だし早替りが気になる演目なので巳っくんがどう…猿之助さんだとどう…とかはよくわからーん!て感じでしたね

とにかく台詞はよどみなかったし6役もきっちり演じかえていて、特に伊達平は元気が良くてスパイスになっていました

代役が決まってからそんなに日にちはなかったはず、だけど台詞に加え早替りの段取りや大作の主役というプレッシャー、いろんな難関を乗り越えて単純にすごいな、と思いました

宙乗りはどこに乗っているのか…見た感じ腰掛けているのかなと思ったんですが、だとしたら足が浮いていて怖そう。

おどろおどろしかった墓場から、急に明るく華やかになってそこを岩藤が宙乗りしていきます

鼻歌でも聞こえてきそうな感じののんびりとした(と例えると違う?)優雅さ

さて今回、代役の玉突きで鷹之資さんが又助役に変更になっていました

鷹之資さんは踊りもうまくて声も大きくて、だけどまだお若いせいかセリフの少ない月とか座ってるだけの月もあったりして…個人的にはもっと出番の多いお役が見たいと思っていました

なので又助は台詞も多く切腹のシーンは涙を誘い、鷹之資さんの演技を堪能できたので、それはそれでケガの功名と言うべきか…

 

さて、骨寄せの岩藤はみんな大好き(笑)河竹黙阿弥の作なんですが、茶室の場の筋書には

「又助とお柳の方は実は兄妹。辰年辰の日辰の刻生まれのお柳の方の血には弾正を痺れさせる力があり、兄妹の命を断つ刀で夫の弾正も死ぬのは因果…(意訳)」

というような記述がありました。

実は血縁とか、十二支の例えとか、血の因果とか、すごく黙阿弥っぽい…!と思っていたんですけど劇中では明示されなかったような。

一方で尾上(雀右衛門)と岩藤(巳之助)の女性が対決するという黙阿弥の脚本としては珍しいストーリーでした

実際の出来事を元にしているようですが…

渡辺保氏の「黙阿弥の明治維新」という著書の冒頭に、岩藤を初演した小団次の当時の評判が載っていて(まだパラパラと最初の方を読んだだけですが)興味深かったです

今回も1部にまとまるように2時間程度の内容に改変されています

いつかコロナ禍があけたところでフルバージョンを見てみたいです

 

2部以降は別記事にて