すきなもの雑記

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すぐそこにある悲しみ…令和六年猿若祭2月大歌舞伎

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遅くなりましたが、可愛い可愛いお光ちゃんの書き置きを。

〜お染久松物の前提〜

歌舞伎用語案内

歌舞伎のストーリーには底本にしている「設定」が多く、お染久松もその1つですよね。丁稚の久松が奉公先のお染と恋仲になり心中する、という実際の事件を元にしています。観客もお染久松はやがて心中する、という前提を知っていないといけません

この月は大阪松竹座でも「ちょいのせ」というお染久松物がかかっていました。今年4月にも「土手のお六」が上演予定です

 

【野崎村】

お光(鶴松)は久松(七之助)の許婚で帰りを待つ身。本物の大根を千切りしていると、婚礼の準備を行う事になりるんるん。しかしお染(児太郎)が玄関先に現れ、嫌な予感がしたお光はお染を追い払う。が、帰った久松もお染に気づき、二人はともに死のうと約束。お光はその決意を察し、婚礼衣装の下で尼になる準備をしていたのだった。迎えが来てそれぞれに連れ戻されるお染と久松。やがて死ぬであろう二人を見送り、自らの恋も終わり父久作(彌十郎)にすがって泣くのであった…

 

歌舞伎界で鶴松くん以上の適任いる!?!?っていうくらい合ってました。感情のジェットコースターを1人の人物の役の中で表現するのは難しいことだと思います。ラストシーン、うららかな小川のほとりで、立ち尽くしたお光がぱさりと手に持った数珠を落としたんです。その瞬間涙が溢れて止まりませんでした。

死ぬしかないという悲壮感を背負ったお染久松がいる、その影で、当たり前だと思っていた幸せを失った1人の女性の悲しみを描いたというのが、このお話の支持される理由だと思います

 

【籠釣瓶花街酔醒】

七之助さんの八ツ橋の美しいこと、そして籠釣瓶で斬りつける勘九郎さんの身体能力の凄さ

とはいえ現行の場のみだと愛想尽かしの場面が長くてお話があまり好きじゃないかも。共感性羞恥ってやつでしょうか。鶴松くんの初菊の後ろ姿が美しかったです。役としては児太郎さんの演じた九重さんが思いやりがあっていいですね。初演は明治中期ということであまり古い作品でもないのが驚きでした