すきなもの雑記

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3階B席の悲哀…令和四年 秀山祭9月大歌舞伎

藤戸の後シテから(画像お借りしました)

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吉右衛門ゆかりの当たり役を、白鸚、幸四郎、菊之助らが播磨屋一門と爽やかに偲ぶ 『秀山祭九月大歌舞伎』観劇レポート | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

 

今回はアッチ(月組)もあるし、予算と時間の関係で3部のみ、白鷺城はミレールで見ることにします

休演の続いた歌舞伎座も落ち着き、9月はほとんど休演者もなかったようです

 

3部

仮名手本忠臣蔵  七段目

海老蔵さんの声聞こえない問題、初日からネット上では色々言われていました

私は後半の楽間近だったのでそこまで気にならなかったのですが一箇所だけ、壇上でおかると手紙書く書かないというやりとりのところは本当に何も聞こえなかった

台詞としては聞かせる箇所ではないのであえて声量を絞っていたのではないかと思うのですが、完全なサイレントではなくワードくらいは耳で拾えたほうがいいのかなと思いました

この場はおかるがキーパーソン、6段目で死んだ勘平、さてその妻おかるは…?という数珠つなぎ展開になっています

そもそもおかるという役は途中で出てきてからはほぼ出っぱなし。身請けに喜び兄の刀傷沙汰に身を硬くし夫の死に絶望するという感情の上がり下がりも激しい役。難しそう…それを引っかかりなく演じている雀右衛門さんすごい…

仁左衛門さんの本心を隠した由良之助の柔らかさと冷たさも良かった。おかるが感情の移り変わりを動的に表現する一方で由良之助は感情の表裏をわずかな表情の変化で見せます

長い芝居ですが、鏡で文を盗み読んだりはしごを降りたりの、特徴的な前半と、平右衛門がやってきてからのおかると平右衛門の感情の流れを描く後半でカラーが異なり盛りだくさん。茶屋遊びの華やかな場面もあり、見ごたえある場です

太夫はいつから縁の下にいたのか、1回見ただけじゃ分からなかった

 

藤戸

狂言を挟む連獅子のような構成で、前半は佐々木盛綱の戦勝で湧いている場に現れる一人の女…息子の死を嘆き去っていく…

狂言を挟んで悪龍に変化し盛綱に襲いかかる、という展開

 

前半の母藤浪の踊りが涙を誘って…

日本舞踊は習ったこともないし大半の振り付けは見ても覚えられないんですが、菊之助さんの藤浪が扇子を幼子に見立てて手を引いているみたいな振りがあって印象的でした

前シテ終わりも舞台中央から盛綱を気にしながらゆっくりと歩き去る藤浪。それだけで家族の悲しみや情感が迫ってくる。

狂言は米吉くん、種ちゃん、うっしーの3名で。

村の若者たちの出で立ちで踊ります

播磨屋に縁のある若者たちというのがいいですね。あと後シテのある演目は間狂言後のお囃子の緊張感が好きなんですが、今回は悪龍が揚げ幕からはけるため、幕引き後にお囃子さんが花道前に移動してきます

特に太鼓は所作板の上に直接置き、盛り上がりもあり太鼓がめちゃくちゃズレていく…!それでもリズムは崩れず緊張感も途切れずめちゃくちゃかっこよくて胸が熱くなりました。叩きながらもキッと花道上の悪龍を見ていて…

 

というわけで…3Bはすっぽんより奥は見えないため、退場の菊之助さんが何をしていたかは見れてないんです。盛り上がっていたからすごかったに違いない。NHKかな?の収録が入っていたようなので放送を待つことにします

 

古典は客入りが難しいとは言われますが、七段目面白かった。客が見る眼を養うためにもベテラン若手勉強会…いろんな層が演じる機会を見たいなと思いました