すきなもの雑記

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配役の仕方について考えてみる…宝塚星組「Le Rouge et le Noir」@日本青年館

赤と黒、原作は読んでいませんが安蘭けいさんの星組公演と珠城さんの月組公演で内容は頭に入っています。今回はフレンチミュージカル版が原作ですが、主人公ジュリアンの造形はほぼ同じで「無愛想だが頭の良いイケメンの青年」です。作中では気高い、と表現されていました。こんな青年に心を開かれたら大体の女性は落ちるでしょ。で、面白いのはジュリアンはなぜか愛について女性に挑もうとするんですね。「落とせなかったら負けだ」みたいな。出自による影響なのだと思いますがジュリアンはプライドと愛、どちらを優先して生きていたのか。おそらく大部分はプライドなんでしょう。だけど一応ルイーズにもマチルドにも本気で惚れているらしい。

全てをなくし、自らが傷つけたルイーズに赦された時、プライドから開放され安らかに死に向かえたのかなと思いました

今回の星組版は本気でソロができる人を集めていました。特に娘役。くらっち、うたち、ほのかぴ、るりはなちゃん…ソロ(及びデュエット)を取った4名の歌唱は素晴らしかったです。谷先生は生徒の実力の発揮できる分野をはっきり分けていて、元々ダンスの得意な生徒は身体表現に集中させる傾向がありましたが、今回も歌える生徒は歌わせる、踊れる生徒は踊らせる、という役割分担がうかがえました

【礼さん】

宝塚版よりちょっと暗く、プライドや貧苦に押し負けて疲れている感じだった。歌唱は本当に別格。うますぎる。なこちゃんが前へ前へというテンポ感の芝居をするので普段は(セリフも動きもイメージ的に)早くて間があまりない感じを受けていたが、今回はもったりとした気だるさが漂っていた

【ありちゃん】

本来ジェロニモはありちゃんのニンじゃないとは思う。客振りで「私をご存知?ならもう言うことないですね」とか本来の雑さを発揮していて笑った。でもこの役をこなしてるところに成長を感じる。礼さんのソロで群舞のセンターをしていてかっこよかった。低音も出てるし高音は声デカだしほぼありちゃんを見てました。途中でありちゃんの柵の前に薔薇の花びらが降ってきてキレイだった。フィナーレではいろんな子に抱きつかれていました

【くらっち】

龍の宮やってマノンやってアムネリス様やって1789アントワネットやって今回のルイーズやったらほぼトップ娘役も同然。なぜことみほをトップにしなかったんでしょうね、人事ってよくわからん。この公演に関しては紛れもなく主演女優。

【うたち】

こんなに本格的な歌唱がうまいとは思わなかった。ことみほとのトリデンテめちゃくちゃ良かった

上から見ていて、音くり寿ちゃんに似ているなあと思いました。輪郭かな。

【ほのかぴ】

特にフレンチミュージカルのカラーが出ていたのはひーろーさんとほのかぴのデュエット。高音を可能な限り地声でいったほのかぴに震えました。衣装も過剰な感じで良かった

【るりはなちゃん】

くらっちとのデュエットも良かったし、とにかく芝居が自然で好き。大人っぽい役も若い役もコメディもいけるし奇抜な衣装や髪型に存在感が負けてなかった

 

ところでこのお芝居、入れ子のようになっていてジュリアンの人生をジェロニモと一緒に振り返るように進んでいきます。柵のような鳥籠のような、大きな「枠」を動かして場面転換していきます。下級生は概念的な存在で物語を外から眺めています。長い時間舞台に出ていて演技をしているので枠の外にいる役者は大変そう。あとはロックミュージカルなので演奏の見えるセットにして生演奏なら言うことないですが、宝塚では無理かな

原曲を聞くと、特にうたちの「ああ退屈だわ」の繰り返される曲なんかはウィスパーボイスっぽい声の出し方をしていて、宝塚でこういうのが許されるなら表現が広がっていいのになと思いました