すきなもの雑記

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妄想の扉が開きかけた令和五年7月大歌舞伎「め組の喧嘩」

幕見で「め組の喧嘩」を見ました

まあまあ長いお芝居なんですが、幕見は海外の方が多くて途中で席を立つ方が多かったですね。大詰に相撲取りと火消のかなり大規模な立ち廻りがあるのですが、旅行の予定が詰まっているとそこまでガマンできないですよね、勿体ない…

 

め組の喧嘩  あらすじ

座敷で飲んでいた相撲取が酔って暴れて隣の火消の席と諍いになる。め組の頭、辰五郎(團十郎)が詫びに入るが同席していた役人は相撲取りと火消のでは身分が違うと一笑。辰五郎は嘲りを飲み込むが、その後相撲取りの四ツ車(右團次)を待ち伏せしだんまりに。居合わせた喜三郎(又五郎)は辰五郎が落とした煙草入れを拾う

後日芝居小屋でも相撲取りの九龍山(男女蔵)とめ組は諍いになる。辰五郎は喜三郎に暇乞いをしに行き、家に戻って煮えきらないと女房お仲(雀右衛門)に愛想を尽かされるが、腹の中では真っ向からのカチコミを決意。妻子と別れ喧嘩の場に赴く。め組の火消は準備万端、双方一歩も引かなかったが喜三郎が止めに入り騒動は収まったのだった

 

芝居小屋の場面で花道からおもちゃの文次とお仲が出てくるんですが、文次役の種ちゃんの男ぶりと言ったら!子役(辰五郎の子)を肩車してにこにこしているんですが、正面で何気なく袖をまくったときに見える入墨。そしてカチコミ前の水かけ。気は優しいけどいざとなったら命を張る、文次にも残してきた人がいたのかなとか、辰五郎とお仲への忠誠を誓うきっかけは何だったのかなとか、いろいろなことを妄想してしまう、そんな背景を感じられるような役作りでした。

そしてこのお芝居は何と言っても喜三郎がかっこいいんですよね。そしてかっこいい役といえばこの方、又五郎さんです。幕引きが締まります。

 

さて、調べ直すと実際の喧嘩の発端は辰五郎たちの木戸銭踏み倒しだそうで。その後の裁きで辰五郎は百叩きの上江戸を追い出されたそうです。当時の習わしでは火消は町奉行、相撲取は寺社奉行と裁きを下すお役所に管轄があったというのも初めて知りました

お芝居自体は明治中期の作、まだ江戸の匂いが感じられます。相撲取が肉布団を着ているので見ているとちょっと面白いです。