NTLiveを上映してくれるなんてとてもありがたいですよね。平日夜の遅めの開始なので仕事終わりにふっと息を抜けるのもとても良いです
実はこの原作で思い出すことがあります
大学時代に英語の授業で原文小説を読むという課題があり、友人がこの本を選んでいました。最後まで読めたのかよく覚えていないけど…とにかく、この上映の終盤までは児童文学だと思ってました
主人公のパイはなかなかに過酷な運命を辿ります。狂言回し役として保険会社の社員がパイの身に起こった出来事を語らせます。動物園を経営していた家族との暮らし、そこへやってきた一頭のトラ、船で動物ごと避難することになるが転覆しパイはトラとの遭難生活を送ることに…
さて、ナショナル・シアター特有の演出ですが、前回見た「ブック・オブ・ダスト」同様、動物がパペットアーティストによって動かされています。それが終盤に明かされる真相と徐々にリンクしていくのが物語の特性にマッチしています。パペットを操るという見せ方は文楽に共通すると思いました。人間が演じる以上にパペットは人形の表情の細かな動きに観客は心を動かされます。英国でも一過性とならず末永く愛されてほしい手法でした。
もう1つ、床面のプロジェクションマッピングを使用した水の表現が素晴らしいですね。今回は芝居の大部分で小舟が大海原を漂っています。嵐の臨場感、ウミガメとの一幕、星の瞬く夜の海…演出効果と芝居だけで空間がこんない大きく動くものかと感動します。客席の仕様がわかりませんが、すり鉢状で見下ろす形だと前方の席でも演出を体験できると思います
残酷な形ですが「オチ」があることで印象に残る演目となりました