すきなもの雑記

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意外と知らない歌舞伎の動物たち 令和五年2月大歌舞伎

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1部

三人吉三巴白波

墓場の場を初見して半泣きの国立劇場三人吉三の感想

 

コクーンにはコクーンの、歌舞伎座には歌舞伎座の良さがあります

1部は久しぶりにドブじゃない1等席に座りました

墓場の場は巳っくん十三郎の正面で、死に際に和尚の足に絡みついた虚ろな顔は孕み犬の呪いのようでした。本当に巳っくんは役の幅が広くて、できればおとせとの馴れ初めの場が見たいですね

軍鶏を捌いた包丁を亀蔵さん源次坊が取り出すとスポットが当たったみたいに鈍く光ってゾッとしました。刀でなく包丁なのが怖いです

最後の立ち回りはお坊(愛之助さん)に見せ場があり、小屋の屋根までななめ梯子で登り、木戸の反対側に渡ります。手前で立ち回るお嬢(七之助さん)と花道で立ち回る和尚(松緑さん)、奥の小屋の屋根で立ち回るお坊、と近くで見るとすごく立体的で迫力がありました

吉祥院の天女の欄間はいつの間にかお嬢の着物の裾が天井の奥から覗いていて面白いなあと思いました。(横の部屋の中に足場を作ってそこから天井に登ってるんだと思う…)そういえば、普段のお芝居ではあまりこういうセットは見ないですね。ジャングルジムみたいで面白いけど、怪我のリスクもありそうです。

歌舞伎を見るようになって初めて知ったのが動物の表現にいろいろと種類があること。

役者が化けるので有名なのは四の切の狐。セリフがカタコトとも違う当時独特の言語表現ですね。次に黒衣さんが頭まで被って演じるのは蜘蛛、猪、鼠、虎など。馬は二人がかりで演じ上に人が乗ることがほとんど、碁盤乗りで前足側の馬役が吊られることもありますね。特に全身で作品のモチーフを演じる蜘蛛や鼠は本物より大きく、舞台を見ていると禍々しく感じます。ちゃちい場合もあるんですが、それはそれで何となく可愛く見えてしまう。

三人吉三のモチーフは犬。犬は実際に出てこないものの、おとせと十三の着物がなぜか犬の柄で死に際を演じるという、心が薄ら寒くなる演出で呪いを表現しています

実は風俗よりも動物の方が変わりなく今と当時を結んでいるのかもしれません

 

2部

女車引

船弁慶

2部は3階席に戻りました…

船弁慶は思ったよりも松羽目物の定石でした。中でも玉様の紅葉狩が形式としては一番近いような。

前半は静御前(鷹之資さん)が花道を何度も振り返りながら去っていきます。踊りは能の所作で非常に繊細。爪先を左右に動かすのとか、とても細やかな動きでした

対して後ジテの知盛はなんだかすごい重量感!弁慶の数珠が負けちゃいそう…!安い席だから花道が見えないのは仕方ないんです。だから見える方は退場を思う存分堪能してほしい

以前配信で能を習っていると言っていたし、この前別の配信では團子さんも習っていると言っていたので、歌舞伎役者の習い事としてはスタンダードなのかも?白洲正子も習ってたみたいですし(言いたかっただけ)。とはいえ鏡獅子とか操り三番叟ともまた違った難しさだろうなと思いました

狂言松緑・種之助・左近の順で舟の守り人を。櫓を使った振りで疲れそうですが、3人ピタリと揃っていてお見事でした。左近さんと種ちゃんの組み合わせ、最近よく見る気がするのは気のせいかな?