今月は3部です
演目が発表されたとき、詳細不明で出演者だけが50音順で並んでいた花競忠臣顔見勢
いーっぱい言いたいことはあるんですが、まずはあらすじから
若狭之助(幸四郎)は高師直(猿之助)を斬った夢で目が覚めるが、実際に斬ったのは塩冶判官。
若狭之助の元へ小浪(米吉)が暇乞いに訪れるが、本来ならば父の家老加古川本蔵が来るのが道理。加古川本蔵が小浪の許嫁、大星力弥に斬られる覚悟と知る若狭之助。
一方、赤垣源蔵(福之助)は雪の夜に義理の姉(笑也)に徳利を預ける(徳利の別れ)。討ち入りが決まり、二度と会うことはないだろうという覚悟の上だった
大星由良之助(歌昇)は葉泉院(尾上右近)に暇乞いに訪れるが、間者の存在に気付き本心を打ち明けられない。そうとは知らず煮えきらない態度に激怒する葉泉院は、塩冶判官の位牌で由良之助を打擲する。由良之助が戸田の局(猿之助)に四十七士の連判状を預け外を出ると高師直の部下、清水大学(幸四郎)と鉢合わせ。連判状を見た葉泉院の怒りは解け、由良之助は討ち入りのため屋敷を去る(南部坂雪の別れ)。
高師直邸の隣には槌谷主税(隼人)の屋敷。侍女お園(新悟)が琴を奏で、俳句の師匠の其角(猿弥)を待っている。やって来た其角は龍田新左衛門(廣太郎)が他の藩主に召し抱えられると勘違いし、妹のお園を暇乞させろと主税に進言する。なにか思案する主税だがそのまま寝入る
隣家で討ち入りが始まり笛の音が響き渡る
やって来た大鷲文吾(右近)が主税に龍田新左衛門の働きを伝え、お園は歓喜する
引き上げる四十七士の元へ若狭之助が小浪を連れてやってくる
小浪と力弥(鷹之資)は夫婦の契りを交わし、つかの間の逢瀬で別れを惜しむのだった…
突然上からですみません。
なんか、こんなに若手って上手かったっけ?
冒頭の足利直義(新悟さん)の「天上人」っぽさからしてびっくり。元から持ってる雰囲気も天皇家っぽいけど。台詞回しが良かった。
槌谷主税の時のはーさんも台詞の緩急がすごく自然。
相手役の新悟さんに対して、気心がしれてるからか、お園が席を外す前に主税に上着をかけてあげるところの「俺の女、メチャ気が利くんで」みたいな横向きのドヤりが良すぎて。
あの笑顔だけでお園と主税の関係がわかるので、そういう細やかなところに今後も注目していきたいと思いました
歌昇さんは若手筆頭でこういう(由良之助のような)お役が合うことは現場のオタクたちにも周知の事実なので、花道の入りもハケもとても温かい拍手だった。立役だけどはーさんとは全然違う色を持ってるし、それこそ弟の種ちゃんとも全然違う。渋い真ん中が似合う空気を持っている。
けんけん氏は立役も女方も声が聞きやすい。
勢いもあって、いい意味で要領がいい、本質を掴むのがうまい役者なんだなと感じる。
大鷲文吾が主税の屋敷に来てからのスピーディな展開は役者のテンションだけで上げていかないといけないので、幸四郎さん猿之助さんのいない場でのギアチェンジはとても見ごたえがありました
福之助さん、鷹之資さんはよだいめと組むことが多く目をかけられているのがわかります
徳利の別れで後ろを向き、掌で涙を止めようとする赤垣源蔵は切なくて、大星力弥は立ち回りにスピード感があってかっこよかったです
幸四郎猿之助両氏のいないところでは猿弥さん笑也さんの澤瀉屋ベテラン勢がぴしっと締めていてくれて、役者のバランスもよかったです
取材会では「ニューノーマルの高速バージョン」と言っていましたが、大元を知らないので高速なのかどうかもよくわからない。
とにかくこんなことでも言わないと、この座組は幸四郎さん猿之助さんで由良之助と葉泉院をやることになるでしょう(年功序列で)
それじゃあ面白くないってことで、クセ強役を猿之助さんが、それならってことでメチャクチャに立ち回りができる清水大学を幸四郎さんが務めることにしたんでしょうか…?
だから並びもあえて50音順にしておいたのかなあと。
もちろん若手にチャンスは回したかったと思うけど、お兄さんたちはお兄さんたちでこの配役に美味しさを感じているはずなので
若手も若手で尊敬や感謝はありつつも「しゃーねえ兄さんたちだな」みたいな感じだったら面白いなって思います
とは言え、大序で口上人形が2体出てきてその声が幸四郎さんと猿之助さんだったところで、何だかうるっと来ましたけどね
本当にムチャクチャで歌舞伎バカな兄さん✕2がノリに乗っていて、見ていて飽きないです