すきなもの雑記

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初めての大向う!令和五年12月大歌舞伎1部

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先んじて1部だけ見てきましたので、溜めないように感想を書いておきます

1部

旅噂岡崎猫

超歌舞伎 今昔饗宴(はなくらべ)千本桜

 

岡崎猫

巳っくんてば昨今の薄汚れ爺役に味をしめたのではないかというくらい、今回の化猫婆役もフィットしています

そして仲良しの新悟さんとの絡みもあり楽しそう

これは元々黙阿弥の「獨道中五十三驛」の中の一場面だとか。猿之助さんと巳っくんの役替りで巡業を周り、その時は宙乗りあり早替りありだったようですね。この場では名題下さんがアクロバティックに活躍されますが今回はやゑ亮さんが勤めていました。また黙阿弥作品にしては珍しく客席降りでの場面転換があります。そのへんも巡業の時に改変していたのかもしれません。何にせよ場面転換がスムーズでした。あやかしの仕掛けで四の切のように欄間から手すりを使って出てくるところがあるのですが、それを見て巳っくんのガチの四の切が見たいと思いました。猫の形態模写も上手だったし狐もうまいんじゃないかな〜

 

超歌舞伎

千年前に青龍(澤村國矢)に討たれた白虎(獅童)がミク姫の力を借りて千本桜の時代に宿敵を倒す…ようなストーリーだったかな?中村屋ご兄弟と種ちゃんは千年前の場面、青虎さんは花道の口上で出演されています。冒頭に獅童さんのトークコーナーみたいなのがあってNTTの最新技術、獅童ツインの紹介に観劇のポイント説明にと客席を充分に温めてから芝居が始まります。SNSにもあった通り、超歌舞伎のファンも歌舞伎のファンも一体になってペンライトを振っており微笑ましかったです

何きっかけかで印象が変わるのは間違いないと思います。「初音ミク」のファンから見たらミクさんが実在の獅童さんと芝居をし、試行錯誤しながら歌舞伎座での上演まで成し遂げたというハレの舞台です。私は歌舞伎のファンで特に歌舞伎の台詞回しが好きなのでミクさんの電子音声には魅力は感じませんでした

AIの役者で芝居は成立するか?という問いがあれば私は否と答えます。肉体や精神が作り出すものにはコピーペーストでは超えられない感動があると思うからです。しかし今回の客席にはミクさんのファンが大勢詰めかけており心から熱狂していました。そういう意味では芸術も新しい段階に進んでいるのかもしれません。皮肉にも伝統を廃し四方八方からかかる大向うは江戸の芝居小屋の熱気を感じられるようで感動しました。平成中村座を持つ中村屋のご兄弟がこの光景をどう感じたのかは注目です

青龍を演じた澤村國矢さんの台詞回しがめちゃくちゃ上手くてかつ声も良くて、これは確かにリミテッドバージョンまかせられる芸達者だわ、と思いました。台詞が聞きやすく存在感もあり、古典でも悪役が勤められると思います。獅童さんのお子さんたちも可愛らしくて舞台度胸があり今後が楽しみです。今回は種ちゃんがお目付け役として一緒に舞台に立っていました。種ちゃんはシスティーナ歌舞伎や今回のようにピンポイントで飛び道具的な演目に出演するのが面白いです